2026/7/6
◆【君はやさしくなれただろうか。 全ての罪を隠したまま。】
人は善か悪か。君は加害者か被害者か。
隠れて人を傷つける事ができる世の中になった。匿名で狂気を振りかざし集団で言葉の暴力を浴びせる。
隠れて傷つく人が多い世の中になった。一人誰にも助けを求めずに深い傷から血を流したまま。
加害者。人々は狂気を、凶器を隠したまま仮面の笑顔で日常を過ごす。
被害者。人々は乾く事なき血を、熟した傷をガーゼで覆い隠しながら日常を過ごす。
知らない間にあなたは人を殺しているかもしれない。
知らない間にあなたは誰かに殺されるかもしれない。
【仮面のまま笑っていた 無言のまま問いかけてた
誰も僕を知らないふりして 見えない様に目を逸らした。】
僕に酷いいじめをした彼等は今でもヘラヘラ笑って過ごしているのだろうか?
抗う事のできない者にとっての不可抗力は手足を縛られた上での拷問である。
その主体から見た他の主体は、見て見ぬふりをする者含めて全て敵なのだろうか?
【僕という名の人形は無形無色無策無口で
大量の水を飲むのですが自分で吐き出す事もできず】
外敵に侵食された主体は侵食された事さえ気付かないうちに内臓を蝕まれる。
いつしかその病は当たり前となり痛みさえ日常化する。慢性的な不感症を併発させる。
抗う事は時に死ぬより面倒なのだ。
月食。ゆっくりと見方によってはあっという間に月の丸い光が影に喰われていく様に。
月食。その形は月の光だけでは浮かび上がらない。影によって初めて輪郭化される完璧な満月。
【理性とか哲学とかを捨てて
ただ、ただ、其れを眺めていた】
気が付かないうちに侵食される理性。
侵食に気付いていながらも抵抗力を無くした正義。
主体は喰われてゆく。生命は喰われてゆく。
生命ある者は外敵に常に狙われている。
ウイルス、病魔、戦争。そんな外敵よりもっと近くに。
隣人。友人。家族。人間が一番人間を殺している。
恒星である月が母性であるはずの地球の影に
「月喰」される様に。
◆穏やかな感じで始まる歌。
夜の静寂、理知的な視点、静かに、しかし確実に近づく死の気配。
本音を出せなかった自分と、周りからの拒絶。
本当は優しくない君の罪を知っている僕。
僕は丸い月の影に喰われ、この世から消え去りたいと願っているようだ。
死にゆく過程で一瞬、激しい感情が垣間見える。
しかし最後の瞬間、時は止まり自らの死に姿と対面する。
それは月の影が満ちた夜だった。
◆この月は自分の目の比喩なのだろうか。
絶命寸前間際でも、眺めていたい見つめていたい。
◆ただ美しいものに魅了され、狂気に捉われる様相をイメージする曲。かつての名曲「絵画の女」や「月風唄」を想起させる世界観である。「絵画」「ピアノ線」といったかつての名曲のキーワードが散りばめられつつ、こちらもCOCK ROACHにしか表現できない集大成的な一曲となっている。
◆無限マイナスの「死者列車」が宝物の私には、とても好きな質感の曲。真綿に絞められる様な苦しみの歌詞と、徐々に轟音へ昇華する楽曲。タイトルも魅力的で期待感が高かった為非常に満足の一曲。
「大量の水を飲むのですが/自分で吐き出す事もできず」
◆荒々しさが鳴りを潜める凪いだ月夜の歌。月の満ち欠けに生命の揺らぎを映し出す死生観に脱帽。最後のワルツを彷彿とさせる儚いアルペジオが魂に付着した穢れを洗い流す。