202号室

 

「幻覚、幻聴との奮闘記②〜跳ね回る阪神タイガース帽の少年編〜。」

 

それはいつも金縛りから始まる。目覚めた時違う世界にいる様なこの感覚。目覚めて一瞬で解る。沸き起こる絶望感。

「またか。」

身体は動かない。呼吸もできない。目と脳の電源だけON。後は全てOFF。普段の睡眠時の数倍は重く苦しいだけの重力。無酸素地獄。

「今日こそ死ぬのか?」

こんな状況ではあるが比較的いつも頭は冷静にものを考えている。

一週間に2、3回。必ず一人の夜。多くは夜中から明け方。いつも違う形状の化け物が迎えに来る。遭遇するというより「遭わされている」「見せられている」感覚。
そしてそいつらは必ず私の恐怖心を最大限まで煽ってくる。

いつもの自分が眠るワンルーム。横に簡易キッチン。さらにその横に立方体の小さな冷蔵庫。必ずその冷蔵庫の中から?冷蔵庫の前から?そいつらは現れる。

「今日は少年??」

その子は小学生低学年ほどの体の小さな少年だった。阪神タイガースの野球帽をかぶってこちらを見ている。
顔の小ささからは比率が明らかにおかしい大きな目玉。例えるなら忍者ハットリくんのまん丸見開いた目玉が顔の大半を占める。瞬きもせずにこちらを見ている。

目玉だけは真っ直ぐに見据えて、しかし唇を小刻みに震わせて笑っている。ぴょんぴょん跳ねながら近づいてくる。

私の布団の上に来ると跳ねるスピードは人間離れに加速する。私の身体の左右をぴょんぴょん跳ねて左右交互に反復している。凄いスピードなのだが目玉だけはしっかり瞬きせずに私を見下ろしている。

最後小さな身体ながら私の上に馬乗りになり

「トモダチニ、、、ナッテクレヘン?」とにっこり笑った。その声は耳を形ごと壊す様な音量で、そして何故か歳を重ねた老婆の様な声であった。

いつもやつらは攻撃的であった。必ず「殺される。」と私が感じるまで儀式的に様々な行為は続くのだ。私の中で【首なし男】と【タイガース帽少年】これはトラウマレベルで怖かった。

その他にも

◆ 巨大苺ショートケーキから無数の人間の手足が生えている化け物が、様々な物を投げつけてくる。

◆ のっぺら坊が伸びる手足を使って遠くから私を殴ってくる蹴ってくる(寄生獣に似ていた)

◆ 軍隊が行進してくる。私の寝床で全体止まれした後、先頭の一例が皆私にライフルを構える。(おそらく見た目から日本兵と思われる)

◆ アルビノ症と思われる全身真っ白な女性(さらに真っ白なドレス)が様々な色の大量のペンキを部屋にぶちまけながら半狂乱で「結婚しろ!」と叫んでいる。

私は上記の体験から、眠る事自体が恐怖となってしまい不眠症を患ってしまう。
又、何をどうしても定期的にその現象が続くのでとうとう医師に相談する。

あまりスピリチュアルに伝えると「精神科へ行け」と門前払いされそうなので、睡眠時の①金縛り②無呼吸を前面に出して③幻覚④幻聴はうっすらと伝えた。

すると最初の医師は私にホルター心電図を着けて24時間心臓の動きを観察すると言い出した。

案の定、ホルター心電図を着けている時は【発作】は起きず「不整脈は確認できたが、直接それらの原因では無い」診断され、脳や心臓のCTを撮られた。が、それも異常無しとされた。

こういった体験を人に話すのは本当に嫌だ。大半の人は嘘、かまってちゃん、オカルト野郎みたいな反応だから。
本気で悩んでいても一部の人以外、誰にも打ち明けられなかった。

ある医師は私の話を半笑いで聴いた挙げ句、診察などせずに安定剤だけ渡してきた。

さあ。大変な病にかかってしまったなあ。と半ばヤケクソでほとんど眠れずに酒を煽る日が続いた。

「幻覚、幻聴との奮闘記③〜悪化!!睡眠時だけでなくついに実生活に現れる化け物達〜」へ続く

 

2020年 7月26日 蜚蠊博士