コラム『廃墟に魅せられて』

朽ち果ててゆく美しさ・・・。

「廃墟」。なんて心をくすぐる言葉なんだろう。
改めて漢字で書いてみても、なんとも言えぬおぞましさと、儚さが垣間見える。
写真集をパラパラと捲る度に、心が躍らされ一瞬の内に惹きこまれてしまう。
無機質と時間が織り成すハーモーニー。もしくは、人工物と自然の核融合。 自然に出来た錆やひび割れや汚れ、そして崩壊した柱や 階段。
錆や汚れなんてものは、普段の生活で言ったら忌み嫌うモノであり、マイナス のイメージしかない。 しかし、このマイナスが増えれば増えるほどに芸術作品として プラスに転換されてしまう。
人間が創れるモノでは無く、自然と時間だけが創る事を 許された魅惑の芸術。
人間が、元を作りうち捨てた物が、自然と時間によってこうも 美しく変わってしまうとは、なんともひねくれたものだ。

 当たり前に、廃墟そのもの自体問答無用で美しいのだが、これがフィルターごしに 写し出されたモノは、微かな光彩をドレスのように纏う事によって、また一層輝きを増す。

 僕が一番気に入っているのは、長崎県にある軍艦島(正式名称、端島)という所が あって、長さ480m幅160m面積6.3hrしかないのだが、一番活気のあった 頃で5300人もの人が、この小さな島に存在していたのである。
ここは、元々炭鉱 の採掘の為に作られた一つの集落であった為、この6、3hrの中には病院、学校、 公園はもちろんの事、パチンコ屋など娯楽施設を携えていたのだ。
1974年に、採 掘停止とともに朽ち果ててゆくのだが、この小さな場所に多くの人の存在があった事 を想像しつつ写真を見る事で、景色がまた一段と変わってくる。
やはり、軍艦島と名 がつけられたが如く、そのフォルムはまさしく軍艦のように威圧感があり、人を惹き つける何かがある。

 ここ最近、行った事のある廃墟なのだが、水戸のトランプの館・・・。ここは、すごい。その大きさと、一瞬にして空間を変えてしまうぐらいのその雰囲気にやられた。
正面だけでもゾクゾクするのに、その側面は一面ツルに覆われ、なんとも言えぬ 美しさがあった。できる事ならば、中に入って行きたいぐらい、その外観から発せら れるパワーは凄まじいものがあった。
 我思うに、すべての廃墟は人工物でありながら、自然に還りたがっているかの様にみえる。

 そう、人が死んで土に還る様に・・・。

 

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